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おひとり様サーバーで見るHolloとMitra
前提条件
- 2025/04末時点
- Google Cloud Engine の
e2-micro
インスタンスで動作させる- Docker は未使用
- おひとり様想定 (利用者が自分1人)
また、単純に当方が機能の全容を把握していないため、誤った情報を含む可能性があることにご留意ください。
要約
GCEの e2-micro
で動かすことを考えた場合は Mitra が軽快に動くしアップデートも楽。
ただ Hollo にしろ Mitra にしろ、アニメやゲームなどに関連するコンテンツ閲覧を主軸にした運用を考える場合は難がありそう。
Hollo
1人用として作成されているActivityPubの実装。
管理機能、およびユーザーのポスト一覧を参照する以外のフロントエンド実装を持っていません。 そのため、投稿するためには別途クライアントを用意する必要があります。 Mastodon API に対応しているため、Mastodon に対応したクライアントが利用可能です。 ただしクライアントによっては利用できないことがあります。
(たとえば当方が愛用している ZonePane はHolloへのログインが出来ません)
公式で日本語のドキュメントに対応しています。
Mitra
軽量なActivityPubの実装。
バックエンド部の実装である上記リポジトリと、フロントエンド実装である mitra-web が分離しています。
mitra
(旧 mitractl
) コマンドが付属しており、コマンドでアカウントの追加やサーバーブロックなどの操作が可能です。
Hollo と同じく Mastodon API に対応していますが、クライアントによっては利用できないことがあるのも同様です。
Monero などを絡めた対応したコンテンツサブスクリプションサービスを設定可能なようですが、当方は使用していないため、この記事では取り扱いません。
環境構築・管理機能
環境構築・アップデート作業
- Hollo: 必要となるミドルウェアを個別にインストール要。アップデートは
git pull
してpnpm install
- Mitra: Debian を利用する場合は、構築・更新ともにほぼ
dpkg
で完了
Hollo は Docker を使用しない場合、順当にサーバー構築の手順が必要になります。 構築・更新ともに Misskey などのサーバー構築を実施したことがあるようであれば実施可能なのではないか、と思います。
Mitra は Debian 向けのパッケージが提供されているため、Debian であれば dpkg
コマンドと Postgresql の設定、configファイルの更新で構築がほぼ完了します。
更新時も最新のパッケージを取得して dpkg
を実行するだけなので手軽です。
管理機能
- Hollo: Web管理画面からの操作
- Mitra:
mitra
コマンドによる操作
Hollo は環境構築時に作成したアカウントは管理アカウントで、Web管理画面へのログイン後に改めてアカウントを作成していくことになります。管理画面では、アカウント管理・カスタム絵文字管理、一部フェデレーションに関する設定、二要素認証の設定が可能です。
Mitra にはブラウザからアクセス可能な管理画面はありません。
サーバーの各種操作は mitra
コマンドで実施していきます。
カスタム絵文字の追加
- Hollo: 管理画面から1個ずつ登録、またはリモートサーバーからのインポート
- Mitra:
mitra
コマンドでの追加
Hollo は管理画面からカスタム絵文字を設定可能で、ショートコードとカテゴリが設定可能です。登録後の変更はおそらく未対応です。 またリモートサーバーのカスタム絵文字もインポート可能です。 リモートサーバーのカスタム絵文字一覧ページはページングされていないため、件数が多いと表示に難は出てくる可能性はありそうですが……。
Mitra は mitra
コマンドを使用してローカルストレージにある絵文字の追加、およびリモートサーバーの絵文字のインポートが可能です。ただしリモートサーバーの絵文字を一覧できる機能はなさそうです。
なお、Hollo も Mitra も (Misskey などで見られる) 絵文字のライセンス登録・表示には対応していません。
古いデータの削除
- Hollo: 不可? (Holloとしての機能提供なし?)
- Mitra:
config.yaml
およびmitra
コマンド
Hollo で古いリモートデータの削除の設定が可能かは不明です。 ぱっと見ではそれらしき設定や操作が行える口は見えていないので、ご存じの方がおられたらむしろ教えて頂けると助かります。
Mitra では config.yaml
で一定期間より古いリモート投稿・アカウントを削除可能であるほか、mitra
コマンドでも削除操作が実行可能です。またどの投稿にも属さない添付ファイルなど、孤立したファイルもコマンドから削除可能です。
ストレージ関連
オブジェクトストレージ
- Hollo: S3互換のオブジェクトストレージを利用可能
- Mitra: 不可
Hollo は Amazon S3 や Cloudflare R2 など、S3互換のオブジェクトストレージに対応しています。
Mitra はオブジェクトストレージに未対応です。
外部サーバーの画像キャッシュ
- Hollo: 外部サーバーの画像をストレージに保存しない設定は不可
- Mitra: フィルタールールの追加で外部サーバーの画像をストレージに保存しない設定は可能
Hollo に外部サーバーから送信された画像をストレージに保存しないとする設定はなさそうです。
Mitra も基本的には同様なのですが、 mitra
コマンドの reject-media-attachments
のフィルタールールを適用することで、ローカルストレージに保存されないようにすること自体は可能です。
ただし、この設定を行うとTL上で画像の自動展開が行われず、URLのみの表示になることに留意が必要です。
(「コンテンツワーニング (CW)」の項目で画面イメージを添付します)
投稿関連
原則、下記のクライアントでの動作を前提として記載しています。
- Hollo: Enafore
- Mitra: mitra-web
カスタム絵文字・カスタム絵文字リアクション
- Hollo, Mitra: ともに対応
Hollo、Mitra ともにカスタム絵文字・カスタム絵文字リアクションに対応しています。
カスタム絵文字リアクションは Mastodon に搭載されていない機能でもあるため、「カスタム絵文字リアクションが利用可能な Mastodon クライアント」と考えるとかなり選択肢が狭まるという印象です。
Mitra は mitra-web があるため、リアクションが利用可能なクライアントが限られるという悩みからはある程度は無縁であると思います。 ただ絵文字リアクションの選択画面が小さくカテゴリ分けもないため、大量の絵文字をインポートする運用は少し大変そうには思います。
(そもそも登録からして mitra
コマンドで1個1個追加する必要があるため、Mitraにおけるカスタム絵文字はあくまで「利用は可能」くらいの位置づけなのかもしれません)
コンテンツワーニング (CW)
- Hollo: 画像の閲覧注意設定、テキストのCWともに対応
- Mitra: 画像の閲覧注意設定のみ対応
Hollo は画像の閲覧注意設定、およびCWによるテキストの折りたたみ両方に対応しています。
Mitra は画像の閲覧注意設定には対応しています。CWによるテキストの折りたたみには投稿・閲覧ともに対応していません。 他サーバーから送信されたCW投稿は展開された状態で表示され、CW対応クライアントでCW投稿を行っても通常投稿として処理されます。
外部サーバーでCWが設定された投稿が送信された場合の画面イメージは下記を参照してください。

Hollo (with Enafore) でCWを適用したテキストと画像を閲覧した場合

Mitra Web でCWを適用したテキストと画像を閲覧した場合
mitra-web で画像のURLがそのまま表示されているのは、上述の reject-media-attachments
設定を適用している影響です。
その他
Hollo はクライアントを持たない都合上、「普段使い慣れているクライアントアプリケーションが対応しているか否か」など、利用するアプリケーションによって印象が変わるのではないかなと思います。 個人的に愛用している ZonePane が動かないのが悲しいところです。
Mitra は動作環境が e2-micro
であるにも関わらず非常に軽快な動作をしています。
以前 Calckey は1ヶ月程度で e2-micro
での動作が難しくなりましたが、現在時点では動作が重くなっている様子をほとんど見せていません。
動作の軽さに関しては、Hollo は利用しているクライアントの影響もあるとは思います。
また、Mitra はログインセッションのデフォルト期間が7日と非常に短く設定されています。クライアントからもこの頻度でログアウトされるため、必要に応じて期間を延長する必要があります。
【追記: 2025/04/28】 Mitra のアカウントを Iceshrimp で構築されたサーバーからフォロー出来ない事象を確認しております。Misskey や Fedibird からのフォローは問題ないため、限定的であるとは思いますが念のため。
まとめ
「GCEの e2-micro
で動かす」という前提のもとだと Mitra が軽快に動作し、かつ構築やアップデートにかかる手順が少ないため楽であるという印象です。
またActivityPubサーバーの利用に応じてデータが肥大化していくことを考えると、データ消去の仕組みが存在していることは非常にありがたいです。
一方で、Hollo, Mitra ともにリモートサーバーの画像をローカルに保存しない設定が (基本的には) ないため、特に海外企業の運営するVPNやクラウドサービスを使用する場合には「海外基準に照らすと法的にNGであるイラスト」がストレージに保存されてしまうことがネックになる可能性がかなり高いように感じます。
また Mitra が、日本のアニメ・ゲームの視聴者間でしばしば問題になるネタバレへの対策としてのCW機能に対応していないことも難しいところであると考えます。 CW投稿を頻繁にやりたい、または他者のCW投稿を必要以上に見たくない、という場合も難しいと思います。
3663 Words
2025-04-27 23:25 +0900